松見町事務所 生産者交流会(マルシチ遠藤鮮魚店)報告
イカの塩辛を作ろう
2014年10月16日(木)11時から、松見町事務所(山形支部)において、「第5回松見町交流会(やまがた生産者・業者の会主催)」を開催しました。今回の生産者は、「イカの塩辛」や「年末お刺身セット(一昨年から数量限定での取り組み)」の取り組みでお馴染みの「マルシチ遠藤鮮魚店(南陽市宮内)」さん(以下マルシチ)。マルシチさんは創業から140年、五代続く老舗の鮮魚専門店。きっかけは佐野水産の佐野洋平さん(双子のご兄弟の弟さん)から、「本物のうまい塩辛を提案したい」との申し出から生活クラブやまがたの取り組みがスタートしたのでした。
左から、佐野洋平さん、遠藤正一さん、遠藤壮太さん |
交流会は、佐野水産の佐野洋平さん、マルシチ店主の遠藤正一さん、次男の遠藤壮太さん、松見町事務所周辺の組合員や西地区の組合員、高畠町の組合員も駆け付けて、総勢22人が参加して、それぞれ自己紹介した後、早速イカの塩辛作りがスタート。まず初めに遠藤正一さんから、そもそも「塩辛とは…」。こぎみよくイカの処理をしながら話が始まります。
<イカの処理>
①イカの身とワタ(肝臓)を分ける。
②イカの身の皮を剥いで食べやすく短冊に切る。
③切ったイカの身に塩をかける。この状態は「塩漬け」。
④塩漬けしたイカにワタ(肝臓)を合わせる。この状態は「ワタ和え」。
⑤「ワタ和え」から肝臓の中の酵素が、たんぱく質をアミノ酸に変化させながら発酵したものが「塩辛」。
塩辛は発酵食品
ほとんどの人は「ワタ和え」を塩辛と思っていたのではないでしょうか。塩辛は、魚介類の身や内臓などを塩漬けにし、酵素(自己 消化酵素及び内含する微生物がもつもの)によって発酵、熟成した保存食品。キムチなどと同じように、一日目と二日目では味が違う)。歴史は江戸時代に遡 り、冷蔵庫がなかった時代は塩分量が全体の3割を占めていて、塩で辛かったから塩辛と言ったとか(今は全体量の1割程度)。
今日の塩辛は、身の皮を剥いで作る「白造り」。皮を剥がないものを「赤造り」、イカのスミを入れたものが「黒造り」(地方に よって若干違う)。マルシチの塩辛は無添加。だから皮を剥いでできるだけ雑菌の少ない状態で造る「白造り」。ウマい塩辛を造るには水分をうまく出してあげ ることが肝。切ったイカに塩をかけてペーパータオルに包んで冷蔵庫に一晩入れる(ワタ(肝臓)も同様)。
市販の塩辛は添加物がいっぱい
皆さんも手のひらを返す運動をしていると思います。本来の塩辛造りでは、時間と手間がかかるので、市販の塩辛には「保存料」や「化学調味料」はもちろん、「着色料」や「増粘多糖類」、「ph調整剤」などが添加されています。
何でも答えるカリスマ
塩辛造りを終えた 交流の中では実に様々な質問が出ます。イカの寄生虫「アニサキス」のことや美味しい煮魚の調理のコツなど、何にでも明解に応えてくれます。さながら「素材 が喜ぶモノづくり」を基本として、一切の妥協を許さない、高橋英雄さん(高橋徳治商店代表取締役)を彷彿させます。「私たちの師匠です。魚のことだけでは なく、今手がけている「雪割り納豆」のことについても相談させてもらっています。アルケッチャーノ奥田さんのように有名ではないけれど、遠藤正一さんは食 べもののカリスマなんです」と、佐野水産の佐野洋平さん。
交流会を終えた組合員はみな笑顔、満足した顔が印象的です。大手量販店が幅を利かせて、マルシチのような専門店はめっきり減っています。魚種は限られ、味 付けも画一化されて美味しくない。いつも間にか魚離れが進んでいるのもこういった理由からかもしれません。創業140年五代続く老舗の鮮魚専門店が地元で 愛され、魚食文化を継承できるよう、微力だけれどOCR用紙に「1」を書こうと思った組合員は少なくなかった交流会でした。